BECK

映画版『BECK』のネタバレレビュー

こんにちは。浅羽ヒロミです。これは映画版『BECK』のレビュー記事です。ネタバレを含みますのでご注意ください。

『BECK』
監督 堤幸彦
脚本 大石哲也
出演者 水嶋ヒロ 佐藤健 桐谷健太 忽那汐里 中村蒼 向井理

ストーリー

平凡な高校生、田中幸雄(コユキ)は偶然、ニューヨーク帰りの天才ギタリスト南竜介と出会う。竜介は才能溢れる千葉、平を誘い、BECKというバンドを結成し、そこにコユキとサクという若いメンバーも加わり、バンド活動を始めるうちに音楽にのめりこんでいき、ライブハウスでの活動やCDデビューなどを果たしていった。ある日、そんな彼らのもとに国内最大のロックフェス「グレイトフル・サウンド」出演の依頼がやってくる。ウィキペディア引用

ハロルド作石の漫画『BECK』が大好きで、2004年に放送されたアニメも大ハマリした。音楽総合プロデューサーはBEAT CRUSADERSのヒダカトオルが努め、BECKの世界観をアニメでしっかりと再現してくれた。

BECKは音楽の漫画なのである。音楽の漫画である以上、映像化する上で最も期待が高まるのもまた音楽であるのは誰もが疑わないところだろう。

結論から言う。映画版『BECK』は残念だった。一言で言うと置いてけぼりをくらった感じ。この映画の見所というか、期待していたのが「世界を変える声」を持つコユキのヴォーカルだ。

誰が歌うのか?佐藤健は歌えるのか?期待は高まる。そんな一番期待していたところがゴッソリ無いのだからこの映画にはなにも評価する部分が無い。

監督を務めたのは堤幸彦氏。同じく、監督を務めた映画「20世紀少年」では、原作漫画を忠実に再現することに注力し、原作ファンを裏切らないようにしたと、インタビューでは答えていた。

実際、映画は細部にわたって原作に忠実に描かれており、漫画「20世紀少年」のファンである私も「イメージと違う」なんていうがっかりは感じずにすんだことは評価した。

漫画原作映画には必ずと言っていいほど、原作ファンの「出来上がってしまっているイメージ」との戦いがつきまとう。人気の原作であればなおさらだ。

BECKも人気漫画である。堤監督起用の裏側には「原作に忠実に」というオーダーがあったのかもしれない。実際配役はうまくいっていたように思う。しかし、今回の演出はいただけない。

コユキが唄う全てのシーンには「キーーン」という耳障りな音が乗り、状況が飲み込めない映画鑑賞客とは裏腹に、劇中のオーディエンスは歓声に沸くというなんとも不思議なシーンになってしまった。

劇中のオーディエンスはコユキの歌声にあんなに感動しているのに、その歌声を聞いていない我々鑑賞者は完全に置いてけぼりをくらってしまう。実態のないものを薦められている感覚。裸の王様のようなものだ。

コユキの歌声は一瞬で人々の心を掴む。そんな歌声にいただくイメージは千差万別だろう。もう誰が歌っても原作ファンの「イメージ」にかなうものなんて無いのかもしれない。

でも私は、映画は映画として堤監督なりの演出でBECKを完成させて欲しかった。「出来上がたイメージ」に逃げずに立ち向かって欲しかった。あんな演出するくらいなら平井堅や福山雅治が歌った方がまだましである。

それから、オーディエンス役のダイコンっぷりはどうにかならないだろうかとつくづく思う。「ノリ」がぎこちないのである。「20世紀少年」のラストのライブシーン然り。この問題は他の映画でもよく出くわす。

「黄泉がえり」では、もうすぐ消えてしまう竹内結子を追いかける草なぎにオーバーラップして、RUIの悲しくも美しい歌声が涙をさそう感動的なシーンだったのに、曲調を無視した下手くそなオーディエンスの「ノリ」のせいで台無しになっていた。

お前らはGLAYでも見ているのか?物語の中核を担うような大事なシーンであればもっとリアリティを追求してほしかった。

映画「BECK」で唯一評価できるところは益岡弘美役の女の子の隙のある感じが非常にエロくて良かった。それだけ。

益岡弘美