地球儀の基礎知識

地球儀の基礎知識

地球儀とは、世界地図を球体に描いて地球を再現した模型で、一般的には、地軸にそって回転できたり、緯度・経度をはじめとする仮想線が引かれ、地球の様々な情報が絵図によって示されています。

地球は、直径が約12,700kmもある巨大な球体です。例えば、直径26cmの地球儀ならば、実寸の約5,000万分の1に縮尺されていて、1cmが500kmに換算されます。

ちなみに、地球は完全な球体ではありませんが、地球儀として縮尺される際には1mmにもならない誤差なため、完全な球体として作られています。

地球儀は最も正確な地図

地球儀は、その球体という特性のため、大陸や国の面積、形状、方向、距離が正確な縮尺によって表されている唯一の地図です。

球体の地球を平面の地図に表す図法には様々な方法がありますが、世界地図でよく用いられるメルカトル図法では、球体を無理やり円筒状に展開した様な形のため、南極や北極に近づくほど(緯度が高いほど)、面積や距離は拡大し、その形状も歪んでしまいます。

歪むメルカトル図法

出典:wikipedia

メルカトル図法ではグリーンランドがオーストラリアよりも大きく見えるのに対し、地球儀上で見ると実際にはオーストラリアの方が大きいことが分かります。数字で見ても明らかです。

正確な地球儀

オーストラリアの面積:7,686,850km2
グリーンランドの面積:2,166,086km2

これは、赤道に近い(緯度が低い)オーストラリアはメルカトル図法でも面積のズレが少ないのに対し、緯度が高いグリーンランドは拡大方向に歪んでしまっているからです。

地球儀は、最も正確な地図であるため、日本からフランスまでの直線距離を調べたり、南米大陸の東海岸と、アフリカ大陸の西海岸の輪郭が重なっていることから、大陸が移動していることについて理解を深めたりといった使い方ができます。

地球儀の役割

古代より、空間情報を理解、伝達するための手段として発達してきたのが地図です。天文学や数学の研究が進むにつれて、人は地球が球体であることに気づきます。

紀元前4世紀ごろの作品と推定される、直径2mの地球儀を支えているアトラス(ギリシャ神話に登場する巨人)の象がイタリアのナポリ博物館に所蔵されていますが、このことから、地球儀は、紀元前4世紀ごろに作られるようになったとされています。

地球儀は、世界を見渡す地図であるとともに、地球を縮小した模型でもあります。

前者は、15世紀にはじまった大航海時代に、船乗りたちによって、羅針盤とともに大陸間を移動するために利用され、さらに地図としての精度を高めていき、現代においても地球の道標としての役割を果たしています。

後者は、天文学をはじめとする学問としての観点から、地球そのものや地球に起こる様々な自然現象の理解を深めるために利用、もしくはその研究の成果として製作されました。

歴史的には非常に高価で貴重なものとして扱われており、学者や有力者、識者や上流階級の一部の人だけにその使用は限定されていました。日本で地球儀が一般にも普及し始めたのは高度経済成長期の1960年代からです。

現代における地球儀の役割といえば、子供へは教育目的として、大人へは観賞用のインテリアとして、その需要は高いです。

2011年に学習指導要領が改訂されましたが、社会科においては地図帳や地球儀の活用を重要視することを求める項目が加えられています。

広い視野から地域社会や我が国の国土に対する理解を一層深め、日本人としての自覚をもって国際社会で主体的に生きていくための基盤となる知識・技能を身に付けることを重視して改善を図る。例えば、地図帳や地球儀の活用を一層重視する。小学校学習指導要領解説 社会編

社会のグローバル化が進み、企業にとっても個人にとっても国際競争が加速しています。競争力を高めていくためには、学力の向上はもちろん、異なる文化や文明(多様性)を受け止める教養を培っていくことが重要視されています。

地球儀の種類

地球儀の種類には大きく分けて2種類あります。ひとつは各地の地形の特徴をわかりやすく表した地勢タイプ。もうひとつは国別に色分けし、図境や国の大ききをわかりやすく表した行政タイプです。

地勢タイプ

地勢タイプの地球儀は、地形の高低差や、その特徴をわかりやすく表示することに特化しています。平野、森林、草原、砂漠、山岳、川、海などが色の違いや濃度、もしくは凹凸で表されています。

行政タイプ

地勢タイプの地球儀は、隣り合う国が別々の色になるように配色することで、その国の領域や大きさ、位置をわかりやすく表示することに特化しています。

国の領域を示すということが特徴のため、その国によっては、領域の解釈が異なることがあり、政治的な意思が反映されることがあるため、日本の教育現場で使われている地球儀は、ほぼ日本製で統一されています。

日本が承認している国の数は全部で196カ国あります。(※平成27年5月15日現在)そのため、地球儀上で配色がおなじになる国が現れますが、色分けに意味はなく、地続きの隣り合う国が違う配色になるようにだけ考えられています。

デザイン特化タイプ

地球儀には知の象徴的な意味合いや工芸品としての側面から、インテリアとしての需要もあり、デザイン的な見た目を優先するために、上記のような特徴を持たないタイプもあります。

また、昨今では液晶モニターで構成される地球儀が発売されており、投影データを切り替えることで地勢タイプ、行政タイプの特徴をあわせ持つようなタイプもあります。

縮尺について

地球儀には様々なサイズがあります。ガチャガチャの景品になりそうなピンポン球サイズから、1999年に世界最大としてギネス登録された「Eartha」という地球儀は直径41.5フィート(約12.65メートル)もあります。

このような特殊な大きさの事例はさておき、現在一般に販売されている地球儀の大きさは、キリの良い縮尺か、球径になるように作られているものが一般的です。

例外はもちろんありますが、多くのメーカーでは下記のような球径と縮尺の地球儀を主に製造しており、教育現場でも使われていて、最も需要が高いのは、球径26cm、縮尺5,000万分の1のサイズです。

球径と縮尺の一覧表

64cm 2,000万分の1
51cm 2,500万分の1
43cm 3,000万分の1
32cm 4,000万分の1
30cm 4,200万分の1
26cm 5,000万分の1
25cm 5,200万分の1
23cm 5,500万分の1
21cm 6,000万分の1
20cm 6,300万分の1
15cm 8,400万分の1
13cm 9,660万分の1
12cm 1億分の1

地球儀の各部の名称

地球儀の各部の名称

地球儀には様々な情報が表記されており、各線や、部位にはそれぞれ名称と働きがあり、地球の特徴を表しています。地球儀を扱う上で基本ともいうべき情報を解説していきます。

①地軸(ちじく)

地軸とは、地球の北極と南極を結ぶ軸のことで、公転軌道面に対して垂直から約23.4°傾いています。多くの地球儀ではこの地軸の傾きを再現して作られています。

地球は、太陽の周りを約365日(365.2422日)かけてひと回りしていますが、この動きのことを公転といいます。地軸の傾きと公転によって、太陽に近い面と遠い面が生まれます。四季の変化が起きるのはこのためです。

また、地球は地軸を中心に約24時間(23時間56分4秒)かけて西から東の方向へ1回転していますが、これを自転といいます。1日の中に、朝と夜があるのは、自転によって太陽の光を受ける面と影になる面ができるからです。

②赤道(せきどう)

赤道は、地球を南北に分ける中心の線で、地軸の中間点から垂直方向に描かれています。赤道より北を北半球、南を南半球といいます。

③南北回帰線

12月22日頃を冬至、6月21日頃を夏至といいますが、北半球では冬至の日には夜がいちばん長くなり、夏至の日に昼がいちばん長くなります。南半球では逆になります。

南北回帰線

赤道傾斜角図 出典:wikipedia

このとき、太陽に最も近い(真上にくる)点が、冬至で南緯23度26分22秒、夏至で北緯23度26分22秒の地点に当たります。これらの地点と地軸と垂直に交わる線のことを、それぞれ南回帰線、北回帰線といいます。

この北回帰線と南回帰線に挟まれた地域のことを熱帯と言い、太陽との距離が近いため受ける熱量が多く温暖で、一年を通して四季の変化が少ないです。

④緯線(いせん)

緯線は、赤道に対して平行に引かれた仮想の線です。赤道を緯度0°として南北にそれぞれ90°まであります。赤道より北を北緯、南を南緯としています。

経線と共に、位置情報を示すための目盛りの役割を担っており、日本の場合、下記のように示すことができます。※この数字はこれまで、何度か修正されており、今後も修正される可能性があります。

経度 : 東経139度44分28秒8869
緯度 : 北緯35度39分29秒1572

これは、東京都港区麻布台二丁目18番1地内日本経緯度原点金属標の十字の交点(国土交通省の敷地内)にある、日本経緯度原点を基準点として測量されています。

⑤経線(けいせん)

経線は、北極点と南極点を通って、縦方向(赤道と直角に交わる)に引かれた仮想の線です。イギリスのロンドンにある旧グリニッジ天文台を通る経線を0°として、東西にそれぞれ180°まであります。東側を東経、西側を西経といいます。

⑥日付変更線(ひづけへんこうせん)

ロンドンの旧グリニッジ天文台から東経、西経ともに180°の位置に引かれた仮想の線です。旧グリニッジ天文台の真裏です。ひとつの国家間で日付が変わらないように、陸地を避けるように引かれています。

地球は、1日かけて西から東の方向に1回転しているため、西へ行くほど時刻が遅れて、ひと回りすると1日ずれてしまうことになります。このズレを調整するのが日付変更線です。

日付変更線を通って、東から西に越える際には、日付を1日進め、西から東に越え際には、1日戻します。例えば、日本からハワイへ行くには、西から東に日付変更線を越えることになるため、1日戻ることになります。

⑦時差表示盤(じさひょうじばん)

時差表示盤は、地球儀の一周360°を24分割、15°毎に示した目盛りです。経度15°で1時聞の時差が生じるので、2点間の時差を調べるときなどに使います。北極点の位置にありますが、付いていない地球儀もあります。

⑧弓(ゆみ)

弓は、地球儀を支えるパーツです。ほとんどの地球儀には緯度尺が示されています。2つの弓によって、東西方向だけでなく、南北方向にも回転できるタイプもあります。

⑨台座(台座)

台座は、地球の公転面に対して平行になるように、支柱は、公転面に対して垂直になるように地球儀を支えています。地球儀は、支柱に対して23.4°傾むくように作られています。