服屋に入って商品に手をかけた瞬間、横から飛んで来る店員さんの声。「良かったら試着してみてくださいね。」私は、そんなの当たり前じゃんと思いながら、「ありがとうございます。」と、軽く会釈。
値段を見ようと、内側に隠されている値札を引っ張りだそうとゴソゴソしていると、店員さんがさらに、「これ、◯◯とのコラボで作った限定品で、ウンタラカンタラ・・・」と、聞いてもいない、興味のない解説が始まります。
その解説が始まってすぐに値札を確認して、予算に合わないことが分かった私は、すでに興味が無くなっている商品の解説を早く終われと思いながら無言で会釈。服屋でよく見る光景です。
今回取り上げるのは、『服屋の店員さんに話しかけられるのが好きではない問題』。こおいう声は昔からよく聞きます。コミュ障が気にし過ぎだという声もありますが、それだけで片付けられないものがあります。
我々が店員さんからの声掛けに不快感を感じる時、何が起こっているのか?客が感じていることと、その解決方法について考えていきます。
私の話をします。若いころはファションにこだわりがありました。古着が好きだったものですから下北や原宿に頻繁に通ってはテロテロの柄シャツ着たり、派手なロックTを着たりしてました。
20代後半になりますと、その趣向もだいぶ落ち着いてきまして、30歳を超えた今では無地の白シャツにジーンズというのがお決まりのパターンになっています。
私も成熟したということなのでしょう。四季に対応する服も大抵そろっていますので、欲しいものもほとんどありません。しいて言えば、消耗の早い肌着類をユニクロで買い換えるくらいのものです。
そんな中、数年着ていたロングコートの擦れが、去年くらいから気になっていたので今年こそ買い換えようと決意。先日、新宿のお店に買いに行きました。
新宿での服の買い物は、駅前のルミネとフラッグスを回るだけで十分です。で、何店舗か回ったのですが、ほとんどのお店で私が望まないタイミングでの声掛けをいただき、このやり取りもう飽きたなと感じるのでした。
先日、会話のキャッチボールが下手な人は自分の言いたいことを優先するという記事を書きましたが、この問題は客側のコミュ障よりも、店員側が自分の言いたいことを優先しているところに原因があります。
服屋の店員さんのよくある行動と、その時、お客さんが何を思っているかを一覧にまとめてみました。
1.入店直後の声掛け
▼例
・いらっしゃいませ
・こんにちは
お客さんに、私はあなたを認識していますよというのが伝わるので良い行動です。たまに何の反応もないお店がありますが、試着をお願いする際にすぐに来てくれるか不安になります。
また、お客さんが返事をしなくてもいい言葉のチョイスも正解です。
2.服に触った瞬間に声をかける
▼例
・良かったら試着してみてくださいね
・サイズ出しますからね
・これは、◯◯っていうブランドで・・・
・今日は(触った商品)を探しに来たんですか?
店員さま。落ち着いて下さい。このタイミングでのあなた達の助けを私達は求めていません。商品に触れたのは以下のことを確認、検討しようとしてしているからです。
・素材の確認
・値段の確認
・自分に似合うか
・この服と合う組合せは何だろう
・重なっていて見えない服を見ているだけ
このタイミングで上記のようなことを言われても、まだそこまで考えが追いついていませんよとなるわけです。『検討が済んで買おうかどうか迷ってるタイミング』でなら、分からなくもありません。
ただ、お客さんは試着なんて当たり前にできることを知っています。そんなことをわざわざ言うなんて恩着せがましいし、ブランドに興味が無い人にブランドの説明をしたってうるせえとしか思いません。
とにかくちょっと待っててください。私達は今、検討を始めるところです。
3.今日は何をお探しですか?
今回、私はコートを買いに来たわけではありますが、コートじゃなくてもいいものがあれば見てみたいと思っています。しいて言えば「欲しいものを探しています」というのが正直なところです。
基本的には認識している欲しいものがありません。なので、できるだけ店内の多くの商品を見たいと思っています。ウィンドウショッピングが目的という人もいるでしょう。
私は問いたくなります。店員さま。今日はじめて会う私の言語化できない欲しいものをあなたに用意することができますか?私はこの要求が叶わないということを理解しているので無言の会釈でかわします。
例えば、不用意にコートですと答えようものなら、これなんかどうですか?これなんかどうですか?と、紹介されてしまいます。即決できるほど気に入るものがあればいいですが、
気に入るものが無かった時、私がこのお店にいる理由が無くなってしまいます。他のものも見ようと思っていたのに、すいません、とか恐縮されてしまうので何だか居づらくなってしまうのです。
4.それ私も買ったんですよ
なぜそんな事を言ってしまうんですか?買おうと思っていたのに。あなたとおそろいの服を持っていることに何の優越感も感じないし、むしろかぶるなら買うのを諦めるレベルです。
これと同系統の言葉に、「それ人気の商品なんですよ。」が、あります。人気だったら街で同じ服を着ている人に鉢合わせる可能性が高いということです。
お洒落にこだわりのある人は人とかぶることを嫌います。既成品を買う限り、これは避けられないことですが、買うときにそんな事を想像したくないのです。
話しかけられたくない人の心理状態
上に挙げた理由はもちろんですが、基本的には時間をかけずに効率的にいっぱい洋服を見たいと考えています。沢山あるお店の沢山ある洋服を見たいので興味のない情報を聞いている暇がありません。
また、自分に似合う服は自分が一番良くわかっていると思っています。店員さんのアドバイスを必要としていないので、調子のいいことを言われるのを嫌います。
服屋の店員が求められていないのに話しかけてしまう理由
店員といえども、別のシーンでは当然お客さんを経験します。お客の視座から不必要な接客が不快にさせることを個人レベルでは理解している人は大勢います。
お店の方針。売上を上げるため。お客さんに積極的に話しかける理由はこれしかありません。恐らく誰かの成功体験を引きずっているのでしょう。
この接客方法で何も買わずに帰ってしまう人よりも買ってくれる人のほうが多い。だからやるんだ。そんな説明を受けているのでしょう。でも本当にそうなのか?しっかりデータを取ってやっているのか?やっているわけがありません。
しかも、店員がうるさいから買ったという人の中にはもう二度と利用するものかと思う人もいたことでしょう。この方法では長期的にはよろしくありません。
求められる服屋の店員の行動
アパレル業界のトップランナーといえばユニクロですが、この会社では、お客様から話しかけられなければ不用意には話しかけてはいけないという、接客の方針をかかげています。
私たちは、じっくり悩んで、納得して商品を買いたいと思っています。それには適切な時間が必要なのです。あなたのタイミングで来られても困ります。
だから、目だけ配っていてください。すいませ~ん!とお客さんに大声で店員さんを呼ばせないでください。手をスッと上げるだけでやってきて欲しいんです。
しつこい店員さんへの対処方法
『服屋の店員さんに話しかけられるのが好きではない問題』は今後も無くなることはありません。だから、こちらもスマートにかわすテクニックが求められます。
基本的には無言で会釈。ニッコリしておけば大丈夫です。後は会話が弾まなそうな一言を返す。「ありがとうございます。」とか、「そうなんですね。」とかです。
それでもしつこく話しかけてくる人にははっきりと、「何かあればこちらからお願いするので待っててください。ありがとうございます。」と伝えれば大丈夫です。
でもこれを言わせる店員て最低だけどね。