マーケティング業界でよく、Facebookマーケティングの成功事例として紹介されるすごい農家さんがいらっしゃいます。北海道でメロンやトウモロコシをつくっている『寺坂農園』さんです。
運営されているフェイスブックページには今日現在、47,044人の「いいね!」がついています。おそらく国内の農家さんが運営するフェイスブックページとしてはダントツの「いいね!」数を獲得されています。
園主の寺坂さんは、大変な努力の末に、直販・通販合わせて年商1億円を突破されているそうです。9月24日には今までの経験やノウハウをまとめた書籍を販売されるそうで、マーケターとしては気になっている今日このごろです。
今回は寺坂農園さんがなぜここまで成功できたのか分析してみたいと思います。
Facebookの秘密
寺坂農園さんのフェイスブックページへの最初の投稿は2012年3月31日です。カバー写真の投稿に20いいねがついていました。お友達がつけてくれたのでしょう。ごく普通の数字だと思います。
次いで2012年4月10日。グリーンアスパラの収穫が始まることのお知らせです。77いいねがついています。普通の農家さんにしては大きい数字だと思いますが不思議ではない数字だと思います。
次いで2012年4月28日。ここから一気にいいね!獲得が加速していきます。訳ありアスパラが余ってしまったのでお安くご提供していますという内容に310いいね。シェアが20件です。
5月にはひとつの投稿で600いいねを突破。6月にはメロン販売が始まり2200いいね突破。7月には6,000いいねを突破するまでになります。
フェイスブックページへのいいねも7月3日に「20,000いいね!」。8月8日に「30,000いいね!」をつけるなど、驚異的な速さで影響力を増していきます。
ここでちょっと詳しい方はFacebook広告で拡散して外国人にいいねを押してもらったんじゃないの?と思うかもしれません。いわゆる箔をつけるために、バカな広告代理店やコンサルタントは外国人ブーストを提案してきます。
日本人では友達の投稿ですら「いいね」を押すことに色々な配慮をしますが、東南アジアや南米の方たちはその陽気な性格から「いいね」を押すことに躊躇しません。
手当たり次第いいねを押してくれる特性があるようです。そのため、いいねの獲得単価が安く、度々、大手企業でもこの方法を取り、外国人のいいねしか無いことに気づかれて炎上するというニュースを良く見ました。
しかし、寺坂農園さんへのいいねは日本人ばかり。もちろん広告は使われていますが、シェアされて拡散されているのを見るとその「いいね」の伸び方は自然だと言わざるをえません。
とは言え、とは言え、3ヶ月で「20,000いいね!」突破というのは驚異的すぎる速さなのでここのノウハウについて、書籍で紹介されていることを期待したいと思います。わからないです。教えて下さいw
追記:rexというサイトでFacebook活用についてインタビューに応える寺坂さんの記事がありました。やっぱりFacebook広告で集めたようです。なるほど。勉強になります。
寺坂様:個々人で友達にFacebookページを紹介するということも行なっていましたが、多くのファンを集めたのはFacebook広告です。2012年の2月から6月の間に約1万人ファンを集めました。
その時は、商品を売るための広告がメインでした。しかし投稿記事の広告にしたところ、ファンの獲得単価は3分の1以下になったのです。その後もFacebook広告を継続的に使い、現在のファン数に至ります。
記事広告は、見た人が「こういう農家があるんだ。」と寺坂農園のことを知ったうえで「いいね!」を押してくれているという感覚がありますね。
出展:rex
通販サイトの秘密
とまぁ、それだけの人が集まるフェイスブックページですので、商品を紹介するとあっという間に売り切れという状況になります。寺坂農園さんの通販サイトがコチラです。
寺坂農園さんで扱っている野菜は富良野メロン、トウモロコシ、カボチャ、ジャガイモ、ニンジン、タマネギ、グリーンアスパラガス、ホワイトアスパラガスといったラインナップ。
チョイスが素晴らしいですね。メロンや、トウモロコシ、アスパラは比較的に高単価で売れるため販売効率のいい作物です。その分、手間はめちゃくちゃかかりますが、競合も減らせます。
さて、デザイン的にはいわゆるキレイなWEBサイトではありませんが、私は逆にこのチープさが良いのだと考えています。しかし、ただチープなだけではありません。
商品説明や農園の理念が6,000文字超えるような長文でびっしり書かれています。農家さんが慣れないのに自分で一生懸命作りました感が出ていて『応援したくなる』感じがあるのです。これって非常に重要です。
あまり詳しくない方は時に、ネット通販を自動販売機のように考えてしまわれますが、それが出来るのは長年テレビCMなどの広告戦略で、その商品を誰もが知っているという状況を作り上げてきた大手企業の商品だけです。
そんな商品でしたらAmazonに2、3行の説明文書いとくだけでも売れてしまうでしょう。しかし、農家さんが扱っている商品は野菜や果物です。
その農家でしか買えない農作物なんてほとんどありません。スーパーへ行けば気軽に買うこともできてしまいます。そんな状況の中で、あなたのメロンが買いたいと思わせるには自分を好きになってもらう事が有効です。
これ、静岡の特産品がネット通販でいくら売れるか見積もってみたの記事でも書きましたが、憧れの芸能人とか、権威ある学者さんがおすすめしていた商品を買いたくなってしまう心理と似ています。
もちろん商品は素晴らしいという前提ですが、商品のスペック以上に誰がおすすめしているかが重要視されるパターンに持っていくのが重要なのです。僕はこれをファンにすると言っています。
どおやってファンにするか?
園主の寺坂さんがどおやってお客さんをファンにしていったのか?寺坂さんは商品の説明と同じくらい丁寧に自分のことを説明するようにしています。
それはこの動画とブログに集約されています。『寺坂農園のダイレクト・マーケティング』。ご自身のノウハウを公開していく目的で立ち上げたっぽいですが、数記事で更新が止まってます。
多分ですけどこれを見た出版社さんに声をかけられて書籍の販売っていう話になったんじゃないですかね。どうでしょう寺坂さん。
要約しますと、寺坂さんがお父様から農地を引き継いだ時、借金が1400万円もあったと。毎日一生懸命働いているのに経営はちっとも楽にならない。うつ病のような状態になる。
しかし、結婚を機に直売所を始める。地元の農家から孤立する。でも直売所と通販を地道に努力したらそれが報われて今では年商1億円です。という、いわゆるサクセス・ストーリーですね。
サクセス・ストーリーって皆さん好きなんですよ。矢沢永吉の成り上がりとか、情熱大陸とか、マンガもほとんどそうですよね。ワンピースとか。
どん底を味わったことがある人がそれでも努力しようとする姿はとても感動的で、応援したくなる空気をおびています。
基本もしっかりやる
さて、目立っている部分からご紹介してきましたが、寺坂農園さんの通販運営は基本もしっかりしています。
電話やFAXでの注文にも対応
効率化重視の小売店だと注文方法はカートシステムだけとかいっぱいあります。しかし、寺坂農園さんは電話やFAXでの注文にも対応。パソコンに疎い方たちもカバーします。
むしろ電話してもらうほうが仲良くなれてリピーターにつながりやすいと思っているかもしれません。
SNSとメルマガを毎日更新
店舗運営をやっていて一番苦しい作業がこれです。ネタが無いよと言い訳をしてやめてしまうことは簡単です。でも、とにかく毎日毎日続けること。これが本当に重要なのです。
商売において一番重要なのが集客だからです。どんなにいい商品でもお店に来てもらわなければ商品は売れません。お客さんとの接点を毎日毎日作ることで店舗に誘導します。
インターネット上にある情報は10年前と比べて410倍になったというデータがあります。でも、人間の処理能力が飛躍的に伸びているわけではないのでほとんどの情報は右から左へ流れていくわけです。
だから、毎日メルマガを送ったとしても開封されない日も多いでしょう。しかし、それはそれほど重要ではなく、存在を忘れさせないというところに重きを置いているのだと思います。
大手企業が直接売上が立つかわからないテレビCMをやり続けて認知度を下げないようにする戦略とようは同じです。
ということで、寺坂農園さんの分析は以上となります。本が出たら購入して答え合わせをしてみたいと思います。