自転車事故

自転車事故の損害賠償1500万円の名目が酷い

フジテレビ系の人気バラエティ番組「あなたの知るかもしれない世界」の第6弾の放送を見ました。「あなたの知るかもしれない世界」は、フジテレビさんの番組紹介を引用させていただきますが、

カメラが絶対に入ることのできない“万が一”の世界。それを実際に体験した人々に取材をし、事実のみで構成されたドラマ「最大公約数ストーリー」をのぞき見してもらうバラエティーです。

と、いうことで、放送を見終わっての第一声が「怖っわ…」でした。ほんとこれしか出てこない(笑)

今回は、「ゆるキャラに入ることになったら」、「わが子が自転車事故を起こしてしまったら」、「オバケがみえるようになってしまったら」、「あこがれのハワイ移住をしてみたら」の4つのエピソードが紹介されたのですが、特に自転車事故の話は生活に密接した話題のため、シャレにならないお話でした。

自分への戒めの意味も込めて自転車事故の話をまとめてみることにします。これを読めば2300万円の慰謝料請求を回避できるかもしれない。自転車乗る人はとりあえず自転車保険に入りましょう

中学生の息子が自転車事故の加害者に

話は野々村真さん扮する「父親(以下、加害者父)」の「息子(中学生)」が、自転車に乗って坂道を減速しながら下ってきた際に、信号が点滅中の横断歩道を渡ろうとしてしまった「男の子(小学生)」と、衝突してしまうところから始まる。

2014年の自転車事故の件数は約12万。警視庁のデータに更に詳しい情報がのっているのでご紹介すると、

平成26年中、全国では自転車対歩行者の交通事故が2,551件発生しており、そのうち794件(31.1%)が都内で発生しています。

とのこと。1日7件ペースで加害者が生まれているかと思うとぞっとします。先月の1/20には、悪質な自転車運転者に対して、講習を義務化する法案が可決され、今年の6/1に施行されます。

法令には14項の悪質運転危険行為が定められています。

・信号無視
・通行禁止違反
・歩道での徐行違反
・通行区分違反
・路側帯の歩行者妨害
・遮断機が降りた踏切への立ち入り
・交差点での優先道路通行車の妨害など
・交差点での右折車優先妨害など
・環状交差点での安全進行義務違反など
・一時停止違反
・歩道での歩行者妨害
・ブレーキのない自転車運転
・酒酔い運転
・携帯電話を使用しながら運転するなどの安全運転義務違反

警察庁によると、危険行為をした運転者はまず、警察官から指導・警告を受け、従わない場合には、交通違反切符を交付される。2回以上の交付で講習の対象となり、受講しないと5万円以下の罰金が科せられる。講習は3時間。内容や方法は施行までに決める。
日本経済新聞からの引用

正直、だいぶ甘い法令のように思われます。指導を受けた際に従えば許してもらえるってこと?もっと厳しくしてもいいような気がします。

高額賠償の自転車事故が増えており、弁護士への相談も後を絶たないとか。横断歩道を歩いていた高齢者を信号無視の自転車がはねてしまった死亡事故では4700万円の賠償請求が可決されたそうです。

警察による実況見分

さてさて、お話に戻ります。衝突した2人は幸いにも、かすり傷程度で済みました。加害者の中学生(以下、加害者)は手の甲を。被害者の小学生(以下、被害者)は頬を。

加害者はすかさず110番へ連絡します。

加害者:「自転車で人とぶつかっちゃって」
オペレーター:「住所とケガの状況を教えて下さい」
加害者:「どこどこです。ちょっと血が出ている程度です」
オペレーター:「命に別条はないということですね?」
加害者:「そんな感じです」
オペレーター:「今別の事故処理で立て込んでいるので到着まで時間がかかるかもしれませんがお待ちください」

事故が起きても命に別状がない場合には警察の処理の優先順位が後回しになることがあるようです。しばらくすると、現場近くの交番の警察官が到着します。

ロードバイクなどのいわゆる良い自転車に乗っていると、スピードを出していたのではないかと疑われてしまいます。

警察官:「スピード出してたでしょ?」
加害者:「出していません」
警察官:「じゃあそれ証明できる人いるの?」
加害者:「いません」
警察官:「証明できないよね」

意地悪すぎるだろ!ちょっと加害者側に感情移入してます(笑)その後、未成年であるため、保護者を呼ぶように言われます。

しばらくすると、事故現場へは交通事故処理専門の鑑識官が現れ、実況見分が行われます。なんやかんやしているうちに保護者が到着します。

被害者と加害者は別々に調書を取られ、事故の整合性を確認されます。

警察官:「スピードはどれくらい出てたの?」
加害者:「詳しくはわかりませんが10kmとか20kmです」
警察官:「100対0で息子さんが加害者ですね」
加害者家族:「え!?」

自転車は自動車と同じで車両扱いになるので、歩行者をひいた場合、自転車に100%過失があるとされることが多いようです。

今回の場合、加害者の中学生には前歴がつき、家庭裁判所で少年事件として扱われます。さらに、被害者との間で民事裁判になります。成人による自転車事故の場合、一発で前科がつくこともあるようです。

加害者母:「それじゃあ自転車なんて怖くて乗れないじゃないですか!」
警察官:「奥さんそうなんです。私なんて家族に自転車には乗るなって言っているんですから。」

これは、実際に自転車事故の加害者になってしまった男性からの証言を元に、再現されたドラマですが、その実在する警察官は、当たり屋みたいに意図的に出てきた歩行者をひいても自転車が悪くなるから奥さんには乗らなように言っていると男性に言ったそうです。マジか(汗)

調書が終わると外には被害者家族がいます。謝罪をしようと近寄る加害者父。すかさずやめたほうがいいよと止める警察官。

謝罪をすると非を認めたことになり、民事裁判で不利になることがあるようです。悲しすぎる。

被害者側の弁護士が突きつけた損害賠償の名目

その後、加害者家族の元には被害者側の弁護士がやってきて損害賠償を求めてきました。今回のケースではこんな名目がズラリ。

・怪我の治療費
・両親が仕事を休んだ休業補償
・精神的な負担を考慮した慰謝料
・顔に重大な傷跡が残るかもしれないことから生じる慰謝料
上記における将来の手術費用
・精神的な不安を感じた時の治療費
・治療における交通費

将来の可能性も含めて賠償請求されることもあるとのこと。ネタバレになるが、今回の被害者は当たり屋目的ということで、容赦無い損害賠償請求になっています。

被害者側弁護士(以下、被弁):「自転車の保険には加入していますか?」
加害者母:「入っていません」

自転車専用の傷害保険に加入している割合は1割から2割だそうです。後から少し紹介しますが、年間3,500円位からあるようなので、大至急入ったほうがいい気がしてきた…

被弁:「では、保険の適用は無しということで。弁護士さんはお決まりですか?早めに弁護士さんについいただいた方がいいと思います。そちらのお子さんが赤信号を無視して突っ込んできたと被害者は申しています。」

加害者父:「逆だろ!そっちが赤信号で飛び出してきたんじゃないか!」
被弁:「それも、これからお話し合いになります。」

事故の相手が本当のことをいうとは限らないということです。すかさず被弁は言います。

被弁:「賠償金額ですが、全て含めまして、2300万円が妥当であると算出しました。しかし、示談に応じていただければ1500万円で手を打ちたいと思っております。」

民事裁判は手間と時間がかかるため、被害者側から示談交渉を提示されることが多いようです。いずれにせよべらぼうな金額にうなだれる加害者家族。

被害者側の非を証明するモノを探しに事故現場にやってきた被害者父。横断歩道近くに設置された防犯カメラを見つけます。

すかさず警察に防犯カメラ映像の確認を求めますが断られます。ひき逃げや、死亡事故などの重要な案件以外では、プライバシー保護のため、防犯カメラの映像を確認することは難しいようです。

その後、弁護士を雇った加害者家族。(弁護士費用は一般的には30万円から)警察にもう一度防犯カメラの映像の確認を要求します。

すんなりとOKされます。弁護士と一緒にいくと監視カメラを確認してもらえることがあるようです。なんじゃそれ。

数日後。監視カメラを確認した結果、被害者が信号が点滅してから渡りはじめたことが確認されます。しかし、損害賠償請求は少々減額される程度でしょうとの弁護士の見解。

相手に過失があっても、歩行者は被害者であることに変わりはないようです。しかも相手は子供。将来や、未来という言葉を盾に何千万、何億と請求するケースも有るようです。

加害者弁護士:「1500万円はそもそも妥当な金額だと思います。今のうちに示談に応じてしまったほうがいいでしょう。」

結局、1500万円の示談に応じてしまう加害者家族。家を売り払い、賠償金を用意します。泣き崩れる一家であります。

それから3ヶ月後。家庭裁判所から呼び出し状が届きます。しかも呼び出しは平日です。まず、家庭裁判所調査官による聞き取り調査が行われます。

それからさらに1か月後、審判のために再度家庭裁判所に呼ばれます。少年事件の場合、特別な問題がないかぎり審判は1回30分程度で終わるそうです。

これで自転車事故の被害者になってしまった際の一連のやりとりは終わりです。悪質な運転をして事故を起こしてしまった際の損害賠償請求はしょうがないです。

しかし、被害者に過失があったとしても、さらに言えば、当たり屋目的の邪な奴だったとしても、自転車側の過失になってしまい、高額な賠償請求が行われるとは何とも恐ろしいです。

自転車に乗ることの責任を考えなければいけませんね。自転車保険ですが、ここ三年前くらいからその存在を聞くようになってきました。

テレビCMでよく見ていたauの保険会社「あ・う・て」が自転車保険では有名でしょうか。

あ・う・ての「ケガの保険 Bycle」(スタンダード傷害保険)は自転車事故重視の保険だそうで、ブロンズプランでは、4,290円/1年で、他人にケガを負わせた際の賠償に備える「個人賠償責任」保証に5,000万円。被保険者への死亡や後遺障害の保証に300万円がつきます。

保険の補償金額を見てもいかに加害者になってしまった際の損害賠償が高額かが分かりますね。

自転車はルールを守って楽しく。歩行者の予測できない飛び出しにも対応できるように距離とスピードは気をつけましょう。ホントに。